知名度: 4.5
発見難易度: 4.0
チリで見つかったエイリアンのミイラ
2003年にチリのアタカマ砂漠付近で小さな人型の遺体が発見された。
遺体は人口ではなく自然にミイラ化したようで、体長はわずか15センチメートルほどであった。
円錐形のような頭と異様な骨格を持つその姿はエイリアンのようで、アタカマ・ヒューマノイドと名付けられ「アタ」の通称で多くの科学者から注目を集めた。
実業家ラモン・ナビア=オソリオ氏に買い取られたアタはその後医師によって生態を調べられることになる。
頭蓋骨は円錐のように伸びており、眼窩(がんか)は通常より斜め、ろっ骨は通常12組あるがアタは10組しかない。
人間の胎児ほどの大きさだが、骨格画像を分析したX線技師によればアタの骨は6歳児並みの成熟度だというのだ。
謎のミイラ「アタ」の正体
米スタンフォード大学の免疫学者チームはアタの骨髄からDNAの塩基配列を調べ、その遺伝物質が人間のものであると結論づけた。
小さなミイラの正体は、エイリアンではなく人間の胎児だったのだ。死産もしくは生後間もなく亡くなった女の子と見られている。
その後研究が進み、アタの成長に関わる7つの遺伝子すべてに変異が見られると分かった。
免疫学者ギャリー・ノーラン氏はこれらの遺伝子変異によってアタの骨格に異常が引き起こされたと考えている。
骨の成熟度が6歳程度だったのは、アタには骨が異常に急成長する珍しい障がいがあったからである。
サウジアラビアの遺伝学者ファウザン・アルクラヤ氏によれば、子どもの病気を引き起こすような遺伝子の変異は1つだけであり、7つもの変異が病気に関与することはほとんど聞いたことがないという。
研究の倫理的問題
人間の胎児をエイリアンと呼び報道するのは、注目を集めるためのマスコミ戦略であったと批判が集まった。
小さな遺体を違法に国から持ち出し、売買されるような研究は行われるべきでなかったと一部の科学者達は主張する。
アタの両親については研究の結果分からなかったが、発見当時遺体は革の袋に入れられそっと地面に寝かせてあったという。
エイリアンだと言われた小さな遺体は、誰かの愛する娘だったのかもしれない。
「このミイラはアタカマ砂漠で暮らす母親の悲しい喪失を表しています」とチリの生物考古学者ベルナルド・アリアサ博士は話す。
人間の胎児であったと判明した今も、アタはエイリアンであると信じて研究を続けようとする学者もいるという。
しかし可哀想な遺体を安らかに眠らせてあげるべきだという声が多数上がり、遺伝子研究と倫理感から論争を生むきっかけとなった。